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研究者総覧「情報知」

情報システム学専攻

氏 名
石井 克哉(いしい かつや)
講座等
情報ネットワークシステム論講座
職 名
教授
学 位
博士(理学)
研究分野
様々な流体現象のシミュレーション / 大規模並列計算 / グリッドコンピューティング

研究内容

計算流体力学、並列計算環境の研究
■研究の概要■

大規模並列計算機環境下で、できるだけ基礎方程式に従った流体シミュレーションを実行し、多様な流体現象の解明と制御の基礎的研究をすすめる。このため、流体現象の物理的側面だけでなく、シミュレーションの実行環境である、大規模な並列計算システムを効率よく、また利便性をよく利用できるための研究や、異なる計算機を組み合わせて使用する計算グリッドシステムで、ロバストで安全に使用できる環境を構築するための研究も進めている。さらに、シミュレーションにより得られた大規模データを解釈して、様々な側面からの情報を得るために、可視化技術を使用した効率のよい解析方法の研究や、グリッドを使って他の研究場所からの解析を行う手段の研究も行っている。

■研究テーマ■

(1) 高精度、高解像度差分法を基づく並列化の研究

大規模数値計算を長時間実行するためには、できるだけ誤差を抑えた計算方法で、並列化がやりやすい方法を開発することが重要である。波動方程式は、線形の場合、長時間の計算でも保存量や、波の伝播速度を保つことが必要であり、非線形の場合は衝撃波という形で、一部の保存量だけが保たれない性質をもつため、長時間の数値計算を行うには従来以上に、精度解像度のよい数値解法を開発する必要がある。近年、流体の数値計算で高精度高解像度な差分法としてコンパクト差分として分類される差分法の研究が進められている。我々のグループでは、その一つである結合コンパクト差分法を使用し、より高精度高解像度で、並列化が容易な差分法を提案した。この方法の有効性を検証するため、以下の2つの方向で研究を進めている。
(a) 境界がある場合においても精度を落とさず計算が可能であることを示し、様々な渦運動の非圧縮流体現象の解析に用いる。現在、上面が一定速度で動いている細長い3次元キャビティー流れに対する並列計算を実行している。特に、アスペクト比による流れ場の変化を流線のカオス化に注目し解析を行っている。
(b) 圧縮性流れにおいて通常のスキームは衝撃波の部分で数値振動が発生する。このため、結合差分スキームの考え方を保存形スキームに拡張し、衝撃波近くで、同等の精度の衝撃波捕獲スキームW-ENO法に滑らかに移行するようなハイブリッドスキームの開発を行っている。これにより、衝撃波前後に発生する微小な構造をより少ない格子点で解像できる。さらに、2、3次元のより複雑な流体計算を精度よく並列計算するための研究を進めている。

(2) JAVAによる頑強性のある流体計算環境の開発

グリッド環境の様にネットワークで結合された複数の計算機を使用して並列計算を実行するとき、計算途中での計算機の故障などに対し、耐故障性のある計算環境を構築しておくことが必要である。耐故障性のある計算手段としてJAVA言語を用いて、JINI技術やJXTA技術を用いた流体計算を実行する環境の構築を追求している。現在、パソコン16台をMyrinetとギガイーサネットの2種類のネットワークで結合し、通信速度向上のための試験を実行している。また、セキュリティに対する調査も行っている。

(3) 物体付近の流れ場や空力音響などの制御の研究
 
物体近くの流れによって発生する音の問題や、脳動脈瘤内の流れの問題、流れの中においた物体表面での化学反応など、流れ場を解明し、現象を制御したい問題は多くある。実際のこれらの問題の研究をすすめているグループとともに、それぞれの問題にあったシミュレーションを行い、各現象の解明と制御を行っている。
 
様々な流れ(凹部、翼周辺、大気)の異なる可視化の例

様々な流れ(凹部、翼周辺、大気)の異なる可視化の例

経歴

  • 1980年東京大学理学系研究科物理学専攻博士課程修了。博士(理学)。
  • 1980年同大学理学部助手。1987年計算流体力学研究所研究部部長。1995年名古屋大学大学院工学研究科応用物理学専攻。
  • 2002年名古屋大学情報連携基盤センタ教授。現在に至る。

所属学会

  • 日本流体力学会
  • 日本物理学会
  • 日本応用数理学会
  • 日本機械学会
  • SIAM
  • AIAA
  • ASP

主要論文・著書

  1. A Fast Solver of the Shallow Water Equations on a Sphere using a Combined Compact Difference Scheme, Journal of Computational Physics 187 (2003) 639-659.
  2. Effect of Weak Sound on Separated Flow over an Airfoil, Fluid Dynamics Research, 33 (2003) 257-371.
  3. Parallelization of a Highly Accurate Finite Difference Scheme for Fluid Flow Calculations, Theoretical and Applied Mechanics Japan, 52 (2003) 71-81.