TOP > 研究活動 > 研究者総覧「情報知」 > 附属組込みシステム研究センター > 高嶋 博之

研究者総覧「情報知」

附属組込みシステム研究センター

氏 名
高嶋 博之 (たかしま ひろゆき)
講座等
職 名
特任准教授
学 位
博士(技術経営)
研究分野
技術経営 / 組込みシステム / イノベーション / 生産性
高嶋 博之

研究内容

組込みソフトウェア技術者の生産性の向上/自動車用SPFの開発

■研究の概要■
機械装置の機能を実現するために内蔵されるコンピュータシステムを、組込みシステムと呼ぶ。この組込みシステムは、わが国の強みであるインテグラル型(擦り合わせ型)の開発形態と相性がよく、戦後、自動車や家電製品をわが国の基幹産業に押し上げた。このインテグラル型の開発形態は、一つの性能を向上させるのに、多くの部品性能を協調させて作り出すことを特徴とする。たとえば、自動車の乗り心地を高めるには、エンジンやトランスミッション制御、タイヤやサスペンションの調整など、多くの領域の補完的な調整が必要となるのである。ある一つの性能の向上には、多くの部品の技術者相互の協調が必要であり、これら個々の部品を担当する技術者相互間の密なコミュニケーション能力がその発展を支えてきた。
次に、個々の制御に目を移す。たとえば、エンジンはガソリン燃焼による爆発の力を回転運動に変換している。これら燃焼圧力や振動、回転速度といった物理現象の変化を検知する多くのセンサーによる情報をもとに、即座に演算し、その結果でインジェクタなどのアクチュエーターを動作させることによってエンジン制御を成立させている。ここで制御のリアルタイム性は非常に重要である。ほんの数μ秒のずれが、エンジン性能を左右することもある。
1980年代以降、欧米企業が苦手としていたインテグラル型開発を克服し、わが国の企業の優位性は薄れてしまった。「組込みシステムに携わる人材の育成」、その開発を担う「ソフトウェア技術者の生産性及び処遇の向上」、組込みシステムを強化するための「ソフトウェアプラットホーム開発」、以上の3つをテーマに、わが国の組込みシステム開発力の向上を目指している。

■研究テーマ■
(1)組込みシステムに携わる人材の育成
組込みシステムを構築する業務に従事する人材に要求される能力とは何か。企業の構成員として、組織内やステークホルダーと行う一般的なコミュニケーション能力とともに、インテグラル型の開発で必要となる技術的な議論のできる能力が必要であることは自明である。さらに、組込みソフトウェアは物理現象をもとに演算し、その結果として物理的な変化を出力するものである。そのためのシステムとしての理解が必要である。これら能力を向上する効果的な育成手法を研究する。
(2)ソフトウェア技術者の生産性及び処遇の向上
わが国のソフトウェア生産性の位置づけはどれほどか。また技術者たちは、その処遇に満足しているだろうか。処遇の点で他国と比較すると、2005年のILO職種統計では、わが国のソフトウェア技術者の給与は、購買力評価でアメリカの約半額、ドイツや韓国に比べても約2割低い水準である。国内比較においても、他の専門職と比べて低いとともに、多くの製造業で働くブルーカラー職と比べても優位性が低い。この状態は能力の高い人材にとって、ソフトウェア産業は給与や労働時間の点から、魅力が低いと言わざるを得ない。ソフトウェア産業で働く技術者の生産性と処遇、及びその規定メカニズムなどを他国と比較することで、日本の技術者の生産性と処遇の国際競争の視点からの評価を行なう。その結果に基づき、適切な政府の政策と企業の人的資源戦略の構築に資する研究を進める。
(3)自動車用ソフトウェアプラットホーム(SPF)の開発
自動車用組込みシステムのSPFの規格化が欧州主導で進められている。わが国の自動車産業の優位性を維持するには、欧州企業の開発したSPFに頼るのではなく、わが国のインテグラル型開発の強みが出しやすい、競争力を持ったSPFの開発が望まれる。高いリアルタイム性を有する高機能なSPF開発を研究する。

■今後の展開■
組込みソフトウェア技術者の質の向上と、彼ら技術者が誇りを持って働くことのできる仕組みの醸成、さらには自動車用SPFの開発を通して、組込みシステムの競争力の向上を進めていく。

経歴

2008年
同志社大学大学院総合政策科学研究科総合政策科学専攻博士課程後期課程修了・博士(技術経営)
1986年
日本電装株式会社(後の株式会社デンソー)入社
2011年
株式会社SAEマネジメント入社
2013年
名古屋大学大学院情報科学研究科付属組込みシステム研究センター特任准教授。現在に至る
2014年
同志社大学高等研究教育機構 技術・企業・国際競争力研究センター共同研究員。現在に至る

所属学会

  • 日本機械学会
  • プロジェクトマネジメント学会
  • ビジネスモデル学会
  • 事業承継学会
  • 自動車技術会

主要論文・著書

  1. 自動車電子制御のアーキテクチャに関する研究, 日本機械学会論文集 C編, 74(743), pp.1758-1764(2008)
  2. ハイブリッド車用電池監視ユニット, 自動車技術, 61(2), pp.40-44(2007)
  3. 組織行動学の見地から捉えた事業承継―ものづくり企業の組織構造との関連性―, 事業承継, Vol.1, pp.78-94(2012)