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研究者総覧「情報知」

情報システム学専攻

氏 名
大山 博司(おおやま ひろし)
講座等
情報プラットフォーム開発実践論
職 名
客員教授
学 位
博士(工学)
研究分野
組込みコンポーネントシステム / 組込み装置向きプログラミング言語

研究内容

組込みシステムの特に制御系のシステムでは、時間制約、空間制約(メモリ容量の制約)を満たすことが重要である。 汎用システムにおいても時間制約や空間制約はあるが、両者には相違が見られる。


例えば、汎用システムにおいて、バッチ処理で翌朝までに処理が終わらなければならないとする。 この場合、翌朝がデッドラインと言える。 それでは、夜間(8時間20分とする) のバッチで1000万 レコードを処理するとすると、3msec に1レコードを処理しなくてはならない。 この場合、3msec × 1000万回が規定時間内に終わればよいので、個々のレコードの処理時間は、平均で 3msec 以内であればよい。


一方、制御系組込みシステムで、333Hz の周期で制御を行うこととすれば、3msec に一回処理を行わなければならない。 8時間連続して動作するとすれば、約1000万回の処理を行うことになるが、全ての回において 3msec 以内で処理しなくてはならない。 つまり 3msec はワーストケース処理時間 (WCET) である。


このように、同じ 3msec ごとに処理を行う場合であっても、両者の制約条件には大きな隔たりがある。


次に空間制約について考えてみよう。 先ほどの汎用システムの例では、1000万レコード以上処理できれば、システムとしては問題がなく、上限が明確であるかどうかは、必ずしも重要ではないことが多い。


しかし制御系組込みシステムでは、1000万件で設計されたシステムで、10,000,001件処理したらどうなるかを明確に定義する。 少なくとも制御対象が暴走してはならず、安全側に振舞うよう、予め定義しておく必要がある。 なお、制御系組込みシステムに限らず情報系組込みシステムにおいても、このような上限の明確化は、しばしば重要である。


以上のように、汎用システムと制御系組込みシステムにおいて、求められる特性は異なる。 このため、これらの実装に用いるコンポーネントシステムやプログラミング言語に求められる特性も相違するはずである。 研究においては、組込みコンポーネントシステムや組込み装置向きプログラミング言語に求められる特性を探り、実装し、有効性の確認を行う。

経歴

  • 1984年3月  岐阜大学工学部電気工学科卒業
  • 1984年4月  (株)大隈鐵工所(現オークマ(株))に入社(現職)
  • 1997年3月  岐阜大学大学院工学研究科修士課程修了
  • 2002年9月  岐阜大学大学院工学研究科博士課程修了
  • 2013年4月  名古屋大学大学院情報研究科 客員教授

所属学会

  • 電子情報通信学会
  • 計測制御学会

主要論文・著書

  1. 安積卓也, 山田晋平, 大山博司, 中本幸一, 高田広章: コンポーネントシステムを用いた組込みシステム向けアクセス制御機構, 電子情報通信学会論文誌, vol. J93-D, no. 10, pp. 2021-2031, 2010年10月.
  2. 安積卓也,山本将也,小南靖雄,高木信尚,鵜飼敬幸,大山博司,高田広章, 組込みシステムに適したコンポーネントシステムの実現と評価, コンピュータ ソフトウェア, Vol.26, No.4, pp.39-55, 2009年11月.
  3. 安積卓也, 大山博司, 高田広章: メモリ共有を考慮したRPCシステム, 情報処理学会論文誌 プログラミング, vol. 2, no. 2, pp. 37-53, 2009年3月.
  4. H. Oyama, M. Ryoki, T. Matsumoto, T. Naoi, M. Goto, EBIFRY, a programming language for embedded systems - combining simplicity with stability, Systems and Computers in Japan Vol36 No.10, pp72-81, 2005年9月.
  5. 大山博司,領木正人,松本忠博,直井徹,後藤宗弘, 組込み装置向きプログラミング言語EBIFRY : 簡便さと安定性の両立のために,電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 Vol.85 no.7 p.672-680,2002年7月.