研究者総覧「情報知」
情報システム学専攻
- 氏 名
- 佐藤 守一(さとう しゅいち)
- 講座等
- ソフトウェア開発実践論
- 職 名
- 客員教授
- 学 位
- 博士(工学)
- 研究分野
- 故障診断 / システム検証 / セーフティ・セキュリティ解析
研究内容
自動車の高信頼化技術
研究概要
車載制御システムは、外部システムとつながることで利便性向上が図られる一方で、制御は複雑化・大規模化傾向にあり、信頼性確保に要する時間と労力が増大化しつつある。そこで、信頼性確保を支援する技術として、テスト工程において稀に発生する異常の要因推定技術や、無線通信インタフェースを介したサイバー攻撃に対処するためのセキュリティ&セーフティ解析・設計技術に取り組んでいる。
研究テーマ(異常の要因推定技術)
テスト工程において異常が発生した場合、通常は、異常の再現を繰り返しながら、原因候補を一つ一つ潰していくことで、真の原因にたどりつくことが可能である。しかし、稀な条件が揃って発生する異常のように,再現させるまでのコストが大きい異常は,原因特定に時間と労力を要してしまう.原因特定に要する時間の長期化は,新車のタイムリーな市場投入の阻害要因となる.
本テーマでは、異常が最初に発生した時点で、その前後のECU(Electronic Control Unit)で扱われている信号データから異常に結び付いた信号パターンを絞り込む方法に取り組んでいる。車速等の量的データと制御モード等の質的データを含む異常発生時データから、正常時データには無い特異な関係(信号パターン)の抽出を、WPMax-SAT(Weighted Partial Max-SAT)の枠組みで扱えるように定式化し、網羅的に高速抽出する。
また、ECUで扱われている信号間には多数の依存関係が存在するため、異常の真因発生は、多数の信号に影響を及ぼす。したがって、異常時のデータには、正常時データから外れた関係が多数含まれ、最も外れ度合いの大きい関係が必ずしも真因だとはかぎらない状況が起こる。そのような状況を考慮し、本テーマでは、異常時データ中の特異な信号パターン群の背後にある構造(信号関係崩れ構造)を推定し可視化する方法にも取り組んでいる。
今後の展開
性能、利便性の飛躍的な向上に向け、外部システムと益々多くの情報をやりとりする方向にある車は、今後、サイバー攻撃の標的になることが懸念されている。安全を脅かす要素として、故障やドライバー誤操作に加えてサイバー攻撃を考慮した系統的な安全解析・設計を行うための方法論、及び計算機を用いた技法を研究する。
経歴
- 1990年
- 大阪大学 基礎工学部 機械工学科 卒業
- 1992年
- 大阪大学大学院 基礎工学研究科 物理系専攻 博士前期過程 修了
- (株)豊田中央研究所入社
- 2005年
- 大阪大学にて博士(工学) 取得
- 2014年
- 名古屋大学大学院情報科学研究科 客員教授
所属学会
- 日本機械学会
- システム制御情報学会
主要論文・著書
- S. Sato,M. Nakano,F. Kubota,N. Sugiura,T. Koyama and S. Nakayama,“Task-Level teaching system with trajectory planning for industrial robots”,Proceedings of IEEE International Conference on Robotics and Automation,pp.2394-2400,1995.
- S. Sato and M. Nakano,“Dispatching rule acquisition with double stochastic learning automata for dynamic material handling system”,Proceedings of the Japan-USA Symposium on Flexible Automation,pp.1287-1292,1996.
- S. Sato, Y. Inamori, M. Nakano, T. Suzuki and N. Miyajima,“Lean business process reengineering methodology for overseas production preparation”,Proceedings of ASIM Dedicated Conference on Simulation in Production and Logistics, pp.481-490, 2004.
- 佐藤, 沓名, 中條, 佐野,“車載電子制御システムの障害診断手法-WPMax-SATを利用したCANデータ特異関係の抽出-”,組込技術とネットワークに関するワークショップ(ETNET), Vol.110, No.474, pp.39-44, 2011.