研究者総覧「情報知」
複雑系科学専攻
- 氏 名
- 小池 亮太郎(こいけ りょうたろう)
- 講座等
- 生命情報論講座
- 職 名
- 助教
- 学 位
- 理学博士
- 研究分野
- 構造バイオインフォマティクス / 生物物理学
研究内容
データベースを用いた蛋白質の構造・機能解析
研究の概要
生命を維持するための様々な現象の多くは蛋白質によって担われている。蛋白質と一口に言っても筋肉の収縮に関わるアクチンや消化を助けるペプシンなど多種多様の蛋白質が存在し、これらを網羅的に解析しようとすると計算機の力が不可欠となる。また、それらの蛋白質のはたらきを理解するときにはその蛋白質がどのような形状であるかを知ることが重要となる。この蛋白質の形状に関する情報(立体構造情報)を解析するさいにも計算機は力を発揮する。多種多様な蛋白質のはたらきを理解するための鍵となるような構造情報の探索、そしてそのような情報を抽出するためのプログラムの開発、また、抽出された情報に基づいた蛋白質の分類、分類情報をまとめたデータベースの構築、などを具体的な課題とし、蛋白質のもつ特性を1つずつ明らかにしていきたい。
研究テーマ
蛋白質の構造変化と機能の相関
蛋白質は特定の形(構造)をとって機能を発現するのだが、常に同じ構造をとっているわけではない。では、どのようにその構造を変えているのか、そしてその構造変化をどのように機能に利用しているのかを研究している。そのために、多数の原子からなる蛋白質の構造変化を簡便に記述するためのプログラムの開発を行っている。また、特定された構造変化と蛋白質機能がどのように関わっているのかをデータベースを用いて解析している。
蛋白質の配列・構造比較法の解析
蛋白質の配列や構造を比較しその類似度を見積もるためのプログラムは蛋白質科学において最も基本的なツールの1つとなっている。この配列・構造比較の問題を統計力学の枠組みを用いて定式化することで物理的に解釈することを試みている。また、配列・構造の類似度をより高感度で検出するための比較法の開発も行っている。
今後の展望
生体内のより高次な機能は蛋白質単体ではなく多数の蛋白質が連携することで実現されている。今後は、蛋白質単体だけでなく複数の蛋白質からなる複合体のはたらきも横断的に解析し、より複雑なはたらきを蛋白質がどのように実現しているかを明らかにしていきたい。
経歴
- 2003年京都大学大学院理学研究科学位取得
- 2003年大阪大学たんぱく質研究所産学官連携研究員
- 2005年横浜市立大学大学院総合理学科学研究科博士研究員
- 2005年東京工業大学学術国際情報センター産学官連携研究員
- 2008年名古屋大学大学院情報科学研究科研究員
- 2009年より現職
所属学会
- 日本生物物理学会
- 日本蛋白質科学会
主要論文・著書
- R. Koike, et al. Protein structural change upon ligand binding correlates with enzymatic reaction mechanism. J. Mol. Biol. 379, 397-401 (2008)
- R. Koike, et al. Alteration of oligomeric state and domain architecture is essential for functional transformation between transferase and hydrolase with the same scaffold. Protein Sci. 10, 2060-2066 (2009)
- R. Koike, et al. Probabilistic description of protein alignments for sequences and structures. Proteins. 56, 157-166 (2004)