TOP > 研究活動 > 研究者総覧「情報知」 > 社会システム情報学専攻 > 情報創造論講座 > 小池 直人

研究者総覧「情報知」

社会システム情報学専攻

氏 名
小池 直人(こいけ なおと)
講座等
情報創造論講座
職 名
准教授
学 位
修士(文学)
研究分野
社会文化論 / 社会哲学 / 北欧思想史

研究内容

北欧型福祉国家おける情報概念と政治的・社会的紐帯の比較研究
◆研究の概要◆
社会的紐帯の質にかかわって、北欧型福祉国家の紐帯の独自性について、とくにデンマークをフィールドとして実証研究をふまえた理論的解読を試みている。
すでに、民主主義論、シチズンシップ論、社会性資本論などの社会科学的視点から、北欧型福祉国家の社会的紐帯の性格把握のための研究に着手してきたが、その成果を公表していきたい。また、今後は「国民的情報」といわれる情報論的視点、および思想史、哲学史的な観点による社会形成に焦点を当て、総合的な北欧社会論の研究に歩みを進めて行きたい。
◆研究テーマ◆
(1) 「共同市民性」の研究
北欧型福祉国家におけるシチズンシップは「共同市民性」という意味合いで表記され、各国ごとに微妙な差異を含みながらも、普遍的福祉国家の制度を基礎として生み出される成員資格であると同時に社会的政治的紐帯を意味する。それは近年とくに、福祉国家の現代化とともに共和主義的な転回を遂げてきたと思われる。この概念の生成と内容的規定を、ヨーロッパ連合などで現在活発化しているシチズンシップ論議を参照しながら解明し、また日本社会への示唆についても研究したい。
(2) 北欧型福祉国家の社会性資本にかんする研究
アメリカの政治学者R・D・パットナムの問題提起以来、社会性資本の研究の全世界的な活性化が見られるが、北欧ではとくに、アメリカ等におけるような当該資本の衰退は見られず、むしろ社会的、市民的紐帯は良好に機能している。その基本要因は、北欧型福祉国家の社会性資本を積極的に醸成する制度的特質によると指摘される。この研究テーマにかんして、私は北欧の制度と社会性資本の好循環の原因を、日本や欧米諸国など既存の調査研究に依拠しながら比較社会論的に開明したい。
(3) 「国民的情報」の歴史的研究および調査研究
デンマークにおいて公共性をともなう情報文化は「国民的情報」という概念で捉えられる。この概念は十九世紀来の歴史をもち、デンマークの社会的・政治的伝統の特質を凝縮したものである。この視点から、第一に日本でこれまで注目されることのなかった教育や社会運動のデンマーク語資料をあとづけ、当該概念の生成と構造、およびその変容を解明するとともに、第二に、現在の北欧における当該概念の現実的な機能と問題を、地方自治体や地域コミュニティーなどの調査研究をふまえて明らかにしたい。また、その上にたって、日本における公的情報の特質との比較検討、「国民的情報」概念からえられる示唆についても解明したい。
(4) 北欧型福祉国家の哲学・思想史的研究
北欧型福祉国家はもっとも理念的な福祉国家であり、その生成過程においてプログラムをもたなかったとしても、到達点においてはっきりとした哲学を読み取ることができる。その理念を解読するために①ヘーゲル法哲学の基礎的研究、②デンマークの思想家グルントヴィの研究、③北欧型社会主義の哲学的研究からアプローチしたい。とくに邦語文献が少ない現状から、グルントヴィ研究に関連するデンマーク語基本文献の邦訳を公刊したい。
 
デンマークの北欧型小国国民国家への出発点

デンマークの北欧型小国国民国家への出発点

 
 

経歴

  • 1984年名古屋大学大学院文学研究科哲学専攻単位取得退学。修士(文学)。
  • 1984年日本福祉大学非常勤講師。1991年名古屋大学教養部専任講師。1995年同大学情報文化学部助教授。2003年同大学大学院情報科学研究科助教授。現在に至る。2003~2004年コペンハーゲン大学政治学研究所客員研究員。

所属学会

  • 社会思想史学会
  • 社会文化学会
  • 日本哲学会
  • 中部哲学会
  • 唯物論研究協会

主要論文・著書

  1. 翻訳:ハル・コック著,グルントヴィ,風媒社,2007年,1-286頁.
  2. 生の啓蒙と常識過程――グルントヴィ「哲学・学芸」の基本性格,社会文化形成,2009年,100-129頁.
  3. 改訂版、デンマークを探る,風媒社,2005年,1-281頁.