TOP > 研究活動 > 研究者総覧「情報知」 > メディア科学専攻 > 認知情報論講座 > 三輪 和久

研究者総覧「情報知」

メディア科学専攻

氏 名
三輪 和久(みわ かずひさ)
講座等
認知情報論講座
職 名
教授
学 位
博士(工学)
研究分野
認知モデル / 認知心理学 / 学習支援システム

研究内容

発見と創造に関する認知科学的研究
■研究の概要■
認知科学の領域で、人間の高次思考過程を研究しています。特に、科学的発見、より一般的には創造的思考過程に興味があります。我々は、人間の高次思考過程を明らかにするためには、重要な現象をできる限り幅広く取り上げて、そこに発現するプロセスやメカニズムを、個別的かつ丹念に研究することが重要であると考えてきました。結果として、この10年の間に取り上げたテーマ、および現在取り組んでいるテーマは、創造性、発見、協同、洞察、外的資源、類推、探索となりました。
我々の研究室では、これらのテーマを、(a)「計算機モデルの構築」(人間の心の模型を作る)、(b)「心理学実験」(心というブラックボックスの中身を探る)という2つのアプローチに基づき研究しています(下図参照)。また、学習科学や情報システム学との橋渡しを意識しながら、発見や創造の領域における学習支援や発想支援のための(c)「計算機システムや授業プログラムを開発」しています。我々の研究室では、理系/文系、工学系/心理系という概念は存在していません。研究室では、計算機端末に向かいシステム構築に励む人と、実験室で人間相手に実験を行う人が、相互作用しつつ共存共栄しています。
■研究テーマ■
(1) 創造性
独創的なアイデアを生成したり、実現困難なアイデアを世界に具体化する─。それを実現してゆくプロセスはどのようなもので、その背後にはいかなるメカニズムが存在するのか。高次思考過程の研究において、人間の創造性はもっとも重要なテーマの1つです。我々は、(b)人間の創造性を実験的に研究してきました。また、そこで得られた知見に基づき、(c)創造的活動を支援するシステムの開発や、創造性をテーマにした授業実践の展開を行って参りました。
(2) 科学的発見
科学者が法則を発見したり、理論を構築したりするプロセスには、どのような知識や方略が関わるのか─。科学的発見のプロセスには、仮説形成と仮説検証という2つのフェーズが存在します。我々は、この2つのフェーズの相互作用として科学的発見を捉え、(b)実験室的研究、(a)モデルベースの研究、さらに (c)科学教育への展開等、幅広い観点から発見に関わる研究を展開しています。
(3) 協同
人と人の相互作用は、様々な場や状況(教室からはじまり、インターネットをはじめとする仮想空間に至るまで)の中で生じます。近年の高次思考過程の研究において、相互作用は重要なホットトピックスとなっています。我々の研究室においても、「協同」は1つのキーワードです。我々は、人と人に限らず、人とメディア、人とアーティファクト(人工物)との関係も含めて、人が自分以外の存在と相互作用する効果、すなわち1+1から2以上の出力が得られる現象を研究しています。
(4) 洞察
誤った思いこみ、先入観から脱することができずなかなか答に気づけない。その一方で、わかる時には前触れなく突然解が思いつく。わかってしまえば何でこんな簡単なことに気づかなかったのかがわからない"。そのような現象は「洞察」と呼ばれ、人間の発見や創造に深く結びついていると言われます。本研究では、問題解決における洞察を、(b)実験的アプローチと(a)モデル的アプローチの両面から検討しました。
(5) 類推
類推とは、すでによくわかっている領域の知識(ベース)を用いて、今対峙している問題(ターゲット)を解決するための推論であり、高次思考過程の研究においてもっとも熱心に検討されてきたテーマの1つです。類推は、発見や想像のプロセスにおいて、重要な役割を果たす推論であると言われています。本研究では、数多くの先行研究をふまえ、(b)日常的文脈における類推の研究や、(c)類推を利用した学習支援システムの構築を行っています。
 

経歴

  • 1989年名古屋大学大学院工学研究科情報工学専攻博士後期課程修了。博士(工学)。
  • 1994年同大学大学院人間情報学研究科助教授。1994年同大学大学院人間情報学研究科助教授。2004年同大学大学院情報科学研究科教授。現在に至る。1991年カーネギーメロン大学客員研究員(1992年まで)。

所属学会

  • Cognitive Science Society
  • 認知科学会
  • 人工知能学会
  • 電子情報通信学会
  • 教育システム情報学会

主要論文・著書

  1. Miwa, K., Morita, J., Nakaike, R., & Terai, H. in press. Learning through Intermediate Problems in Creating Cognitive Models. Interactive Learning Environments.
  2. Miwa, K., & Terai, H. (2012). Impact of Two Types of Partner, Perceived or Actual, in Human-Human and Human-Agent Interaction. Computers in Human Behavior, 28, 1286−1297.
  3. Miwa, K. (2004). Collaborative discovery in a simple reasoning task. Cognitive Systems Research, 5, 41- 62.