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対人回避行動の方法

人は対人回避をする際に,どのような回避行動をとるであろうか.まず一つ考えら れるのは速度の調整である.現在の歩行行動を維持することにより衝突が予想さ れる場合は現在の速度に緩急をつけて調整すれば回避することが可能である. しかし,それだけでは最も効率の良い回避にはならない.人間は3次元空間に存 在しているが,実際の歩行の軌跡は2次元平面として考えられる.したがって,人間の回避行動には,速度調整に 加え,2次元平面での経路変更の要素を考慮する必要がある.そこで,本節では, 3つの基本的な対人回避方法を提案する.これら3つの対人回避方法を状況によ り使い分けることで,より実際の人間に近い対人回避システムが実現できる 2.5

1.
回避対象の後方へと進路変更するパターン

この回避パターンは,回避対象の後方に回り込むことにより回避対象の進行方向と自分の進行方向が交わらないようにするもので,もっとも安全かつ確実に対人回避できる方法であると考えら れる(図2.5参照).

このような回避行動をとる場合は,安全指向が高い人,心理状態あるいは時間 的に余裕のある人があてはまる. しかし,この方法では目標地点に対して,迂回してしまうことになり,歩行距離 が長くなってしまう.ただ,自分自身(の速度を緩めて同様の回避行為を とった場合,同じ速度のまま回避行為をとるよりも目標地点到達時間は増加する が,歩行距離は減少する.速度を強めると逆の現象が起きる.

  
Figure 2.5: 回避対象の後方へと進路変更するパターン
\includegraphics[width=25zw,height=25zw,keepaspectratio]{kaihi1.eps}

2.
回避対象の前方へと進路変更するパターン

この回避パターンは,自分が相手の予想進路上に入ることで,衝突を回避するも のである(図2.6参照).

この回避行動では速度を速めるなどして,できるだけ速く回避対象の進路方向上に入るこ とが必要である.その際,相手の進路方向に対し,垂直に自分の進行方向を設定 することにより,もっとも早く相手の予想進路方向上に入ることができる. 心理状態あるいは時間に余裕がない人がこのような行動をとる であろう. しかし,相手が自分とほぼ同時期あるいは先に,自分が目標とする進 路先に入ってしまった場合,回避方法を回避対象の後方へと進路変更するパターンに 変更しなければならない.

  
Figure 2.6: 回避対象の前方へと進路変更するパターン
\includegraphics[width=25zw,height=25zw,keepaspectratio]{kaihi2.eps}

3.
進路変更せずに速度のみで調節するパターン

この回避パターンは,速度によってはもっとも衝突する可能性が高いが,歩行距 離に関しては最短であると考えられる.(図2.7参照) このような行動をとり,衝突した場合は,強気であったり,あるいは相手側が回避してくれ るだろうという依存心が強い人である.

  
Figure 2.7: 回避対象の前方へと進路変更するパターン
\includegraphics[width=25zw,height=25zw,keepaspectratio]{kaihi3.eps}



Hiroyuki Furukawa
2000-04-08