水力エネルギーは24時間・365日の発電を可能にするため,有望な再生可能エネルギーとして注目を集めています.ただし,大規模集中型発電は,災害時には電力供給網の機能停止に伴って電力供給能力を失うおそれがありあます.そのため,近年では小規模河川や水路などに賦存する小水力エネルギーを活用する,小型水車による小規模分散型発電に期待が寄せられいます.我々の研究室では,小型水車の一種であるサボニウス水車の水力特性およびロータに作用するトルクについて数値シミュレーションを用いて調査しました.
Savonius水車のロータを通過する非圧縮性流れのシミュレーションを行いました. 流れ場の計算はVortex in Cell法 (VIC法)を使用しました. VIC法は流れ場を渦要素の集合体として扱い,各渦要素を追跡することで全体の流れ場を追従する方法です. 図10-1に本シミュレーションの計算領域および水車の配置位置について示します. 流れは左端からU0の一様流を与え,サボニウス水車は主流方向から2.1DRの位置に配置しました. 計算領域は5.8DR ×5.3DRであり,格子点数は2250×1500としました. 主流流れが羽根面と衝突することにより,ロータにはトルクが作用して回転運動を行います.
ロータ周りの渦度分布をアニメーション10-1に示します. また,図10-2の左から,それぞれ本シミュレーションの渦度分布,Nakajimaら(Nakajima, M. et al., J. Fluid Sci. Tech., Vol. 3, 2008, pp.410-419.)の流れの可視化写真,および流れの様子のイラストを示しています. 進み羽根(Blade A)では,0度,45度 ,90 度で凸面から顕著な渦度の放出はなく,流れが凸面(とつめん)に沿っています. 135 度では,羽根先端から大規模な時計回りの渦が放出されています. 戻り羽根(Blade B)では,45度において進み羽根の先端から放出された反時計回りの渦列と凸面が衝突しています. 90度と 135度では,戻り羽根に衝突した渦列が水平方向に流下し,戻り羽根の先端から放出された時計回りの渦が斜め上方に流れます. ロータ下流には大規模な渦流れが発生しています. これらの現象は,実験の可視化結果からも同様に観察されました.
アニメーション1 ロータまわりの渦度分布(動画)