開放型の貫流水車(クロスフロー水車)を通過する流れを粒子法でシミュレーションしました.
図1は,水車の概要と解析領域を示します.
ロータの直径Dは200 mm,ブレードの枚数は20です.
ブレードは円弧形状をもち,曲率半径は33 mm,厚さは5 mm,弦長は42 mmです.
滝状に落下する水流の下部にロータが設置されています.
流れの動画を図2,静止画を図3に示します.
落下水流がブレードの先端に直接衝突し,ロータの回転につれて衝突位置がブレードの凹面に沿ってロータ回転軸の方向に移動しています.
ブレードの凹面に衝突した水は,ロータの内周内側への流入あるいは外周外側への飛散に分岐しています.
ロータの内周内側へ流入した水は,ロータ回転軸の下方においておもにブレード凹面に衝突したのち,ロータ外部へ大きく飛散します.ロータに作用するトルクを計算してロータ出力を求めたところ,実験値とほぼ一致する結果が得られました.
粒子法を用いた流れのシミュレーションは,クロスフロー水車の設計に利用できることを示した研究です.
図2 クロスフロー水車を通過する流れ(動画)
農業用水路など観察される水深が浅くて流速が高い浅速流を利用する,開放型クロスフロー水車を通過する流れを粒子法によりシミュレーションしました.
図4は,水車の概要と解析領域を示します.
水車と流路底面の間隔が3 mm,流速が2.6 m/sの場合をシミュレーションしました.
ランナは,20枚のブレードから構成され,直径は200 mmです.
ブレードは円弧形状をもち,曲率半径は33 mm,厚さは3 mm,弦長は40 mmです.
流れの静止画を図5に示します.
水車に近づいてきた浅速流は,ランナ回転軸直下でロータ内部に流入します.
この水流は,回転軸下流側のからロータ外部へ流出します.
この流出水は翼への衝突に起因して運動エネルギーを失うため,ロータ背後に水塊を形成します.
このような流れは,流れの可視化実験と一致することを確認しています.
また,計算されたロータ出力も実験値とほぼ一致しています.
以上より,浅速流で駆動される開放型クロスフロー水車の設計にも当該シミュレーションが利用できることが判明しました.