Hall [6]が分類した密接距離に相当する.この領域には他人を入れない.親し い人間であろうとも侵入してきたら回避行動をとる.この心理的空間には 身体の干渉などの物理的な空間も含める.
コミュニケーションを行う人間はこの領域に侵入することができるが,その他の 人間は侵入できない.普段はこの領域に他人を入れない縄張り領域である. Hall [6]のパーソナルスペースに相当する.コミュニケーションをする人間を この領域へ受け入れる.
コミュニケーションをする必要がある人間に対しては接近しようとする心理的な 力が働くが,その他の人間に対しては何ら力は働かない.
ここで,それぞれの領域の形であるが,実際のパーソナルスペースはたまご型で あり,人間の位置するところはたまごの底あたりである.自分自身の後方はパー ソナルスペースが狭いので,他の人間が存在してもそれほど不快に感じないが,前 方はパーソナルスペースが広いため,同じ距離でも後方では不快に感じなかった 距離が前方では不快に感じることもある.混雑した電車の車内などで入り口付近 の人がドアの方向へ向き,自らのスペースをつくっているというのは良い例であ ろう.したがって,領域A,領域B,領域Cを図示すると図2.1になる.
以後,便宜上,本論では領域Bをパーソナルスペース,領域Aを緊急回避エリアと 呼ぶ.