<Ghasa〜Tatopani>

13日目:Ghasa(2010m)からTatopani(1190m)へ

  睡眠時間が長かったせいか、いろいろな夢をみたようだ。シュラフをかたづけ荷物をパッキングし昨夜できなかった部屋のスケッチをとる。
 7時に朝食。チャパティ(*1)とガーリック・スープをたのむ。半頃には出発する。

 急な下りを降りるとしばらく右岸を進み、さらに行くと左岸への吊り橋を渡った。時間が経つとともに谷間にも日が射すようになり、行程が進むとともに気温も上がってくる。しまいにはセミの声まで聞こえてくる。
 細く深くなった谷にかかる木造の橋を渡って再び右岸へ移る。ここからさっきの吊り橋までの右岸ルートは所々崩壊して廃道になっているという。橋からしばらくいった集落ルプセ・チャハラ?(Rupse Chhahara:1600m)でお茶休憩する。街道に面した軒先でブラック・ティーを飲む。日当たりの良い向かいの空き地にはガチョウ?の子どもたちが寄り添ってまとまってる。
 おどろいたことにここのお茶屋には猫がいた。グレーと黒の彼は人間の飼育動物とどのように共存してるんだろう?

 レテを過ぎてからだと思うが、草花の干し飾りを見かけるようになった。街道を横切るように2本の木にひもを渡して、ひも全体に草や花がつるしてある。柱となっている木はたいてい上の部分を残して枝が剪定してある。
 10時頃ダナ(Dana:1400m)に着く。大きな支流を渡りゲストハウスでお茶休憩をとる。
 ここではメニューにあったレモン・ジュースを頼む。これが絞りたてでよかった。
 ゲストハウスにはバハドールさんやペンマさんの同僚?である同じトレッキング会社のポーター連中がいた。彼らはジョムソンでお客さんやガイドと合流し、ムクティナートへ向かうという。

 ダナを超えると街道の所々で子供たちがスンタラ(*2)を売っていた。今村さんが最初にあった子たち(男の子2人と女の子1人)から9個、2ルピーで3個という値段でかった。次にあった子の言い値は3ルピーで4個という。で、次にあった子は4ルピーで4個と言ってきた。はじめに9個も買ったのであとの二人からは買わなかったが、しくんだかのように下界に降りていくにつれスンタラの値段が上がっていく。

 タトパニ(Tatopani:1190m)についたのは11時半頃だ。昨日はカロパニからガサまで進むのは先に急ぎすぎだと思ったが、今日はつくづくガサ泊りでよかったと思わされた。とにかく暑いのだ。ただでさえ暑いのは好きでないのに、つい数日前の冬のヒマラヤから夏の下界に降りてきた状態でかなりこたえる。昼前についてよかった。
 泊まるロッジは街道の右側に部屋のある建物があり、左側が食堂となっている。食堂のカリ・ガンダキ側はテラスになっている。ここで昼食をとった。料理がうまく食が進む。

 タトパニ(熱い・水)という地名の通り、ここには温泉がある。食後しばらくおいて近くの川辺にある温泉に行った。温泉といっても日本のように裸ではいるのとは違う。5ルピーを管理人のおじさんに払い水着を着た状態でプール状にしつらえた温泉につかるのだ。
 先客は何人か来ていてそのなかには女性も2〜3人ほどいた。水着といっても泳ぐわけではないので、男は融通がきいていい。単パンの連中やブリーフのやつもいたようだ。川岸には干しヒモが立ててあり、色々な衣服が干してある。欧米人は本や雑誌を持ってきている人が多く、それを読みながら乾燥させているようだ。
 つかる温泉だが、旅路の垢を落とすためにも石鹸ぐらいあればいい。体は洗える、と言うよりも洗ってからはいれと入り口の看板にも書いてある。

   温泉でさっぱりした後はテラスでオレンジ・ジュースを飲み、その後タトパニの町を散歩する。ポカラから近いこともあるし観光客も多いせいか店の種類も品揃えも豊富だ。日用雑貨、石鹸、シャンプー、食品に薬品などいろいろある。他にはカメラのフィルム(リバーサルも有り)、各種バッテリーもあった。洗濯屋さんや散髪屋さんの看板も出ている。
 さらにすごいのは、ロッジのショウ・ウィンドウにバナナ・ケーキヤアップル・ケーキといった各種ケーキが置いてあったことだ。いくらポカラから近いとはいえネパールの車の通らない山奥である。この商魂ならば日本人がおしかけるようになったらスシ・バーすらできるかもしれない?

 ポリス・チェック・ポストやヘルス・ポスト?なんかはあったが郵便局を見つけることができなかった。ここからはがきを出すのをあきらめかけたが、なんと宿の1階の雑貨屋でメールボックスを見つけた。店番は少年だ。絵葉書を買えばメールボックスが使えるだろう。
 「絵はがきは1枚いくらだ?」
 「15ルピーだよ」
 カトマンドゥでの値段が10ルピーだからこんなものなんだろう。
 「スタンプ(切手)はある?」
 「10ルピーのが3枚しかない。」
 3枚あれば十分だ。確か2ルピー切手が手持ちの中にあったはずだ。
 「その切手はいくらだ?」
 はじめのうちは少年に質問の意図が伝わらなかったようだが、すぐチャージ(手数料)と理解して2ルピー余分にかかるといった。そこで絵はがきと切手をそれぞれ3枚、他に15ルピーのスナック菓子を買うことにした。
 「全部で96ルピーだろ」
 「いいや81ルピーだよ」
 驚いたことにこっちが計算した言い値よりも安い値段を出してきた。内訳を聞くと絵はがきが1枚10ルピーになっていた。
 かった絵はがきをかきあげ、2ルピー切手を足してメールボックスに投函した。きちんと郵便局まで運んでくれるのだろうか? そして日本まで届くだろうか? 楽しみだ。

 日が落ちつつある。谷間の日没は早く、我々が歩いてきた方向、北の谷間の奥にわずかに頭だけだしている白い山稜が紅に染まる。人がいっぱいのテラスでそれを眺めていると静かな祭りの中にいるような気分になる。カロパニのようなヨーロッパのどこかを想像させる景観ではなく、ここはここでしかない。
 日が落ちると庭の電球がともる。音楽も流していることも考えれば自家用の発電機ぐらいあるかもしれない。ここも欧米人でいっぱい。下のテントサイトには日本人のグループが来ているらしい。
 食事も楽しみの一つだ。夕食にはベジタブル・オウグラタン?(Augratin)とベジタブル・コーン・スープを頼む。今村さんはベジタブル・チョウメンとチーズ・マッシュド・ポテトだ。試しにバナナ・パンケーキも頼んでみる。

 心地よい一日も夜がふけてくる。トレッキングももう終盤に入ってきた。明日は汗をかきながらの歩きになるだろうが、この先の街道になにがひらけるかが楽しみだ。


(*1): ナンの親戚(のようなもの)、クレープの遠い親戚?(のようなもの)。
(*2): みかん。オレンジというよりは緑でまだ熟していないような状態?で売っている。

<14日目:Tatopani(1190m)〜Beni(830m)>


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