最近の研究例
[Fe(bpy)3]2+錯体の光励起後の緩和ダイナミクスに関する研究
[Fe(bpy)3]2+錯体では、光励起後に電荷移動励起状態からd-d励起状態への超高速緩和が起こります。実験と理論の両方から、スピン状態変化を伴うこの緩和ダイナミクスのメカニズムの解明が進められています。本研究では、当研究室で開発した[Fe(bpy)3]2+錯体のd-d励起状態を高速に計算できるモデル電子ハミルトニアンを用いて、d-d励起状態の分子動力学シミュレーションを行い、項間交差と内部変換の速度を計算しました。これまで3重項d-d励起状態が超高速緩和に関与しうるという実験・計算研究の議論がありましたが、その中で本研究では特に内部変換に関する解析を行いました。その解析から、錯体の構造が歪むことに伴い、3重項状態間の内部変換が100フェムト秒オーダーで起こりうるという結果を得ました。(Phys. Chem. Chem. Phys. 18, 4789 (2016))
* and N. Koga,赤小豆色素の構造決定に関する研究
これまで赤小豆の色素はアントシアニンとされていましたが、吉田グループは、シアニジンとカテキン骨格が縮環した別の色素であることを突き止めました。この構造決定のうち、当研究室では、実験のみでは決定できなかったカテキン部位の絶対立体配置の決定を担いました。具体的には、量子化学を用いて円二色性スペクトルを計算し、カテキン部位の置換基が無い仮想的な構造の計算スペクトルとの比較から、カテキン部位の立体構造の情報のみを抽出し、実験で測定された円二色性スペクトルに解釈を与えることで絶対立体配置を決定しました。(K. Yoshida*, N. Nagai, Y. Ichikawa, M. Goto, K. Kazuma, K.-I. Oyama, K. Koga, M. Hashimoto, Sci. Rep. 9, 1484 (2019))
, Y. Takaya, and T. Kondo,