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はじめに

人の交通は様々な交通手段によって行われているが,都市空間における距離の 比較的短い移動や施設内での移動は徒歩による場合が多く,また,仮に鉄道や 自動車を利用する場合でもその端末の移動は徒歩になることが多いから,結果 として人の交通にかかわる道や広場などにおける歩行は重要な研究対象となる.

さて,この人間の歩行を空間的現象としてとらえると,移動の道筋すなわち経 路を順次選択していくことの継起であると理解される.歩行者は移動にあたっ て,さまざまな次元の選択肢に答えることを要請され,意識的あるいは無意識 的にそのひとつを選び続けて最終的に移動の目的を果たしているわけである. この過程は所与の環境,つまり交通環境のあり方と人間側の条件との動的な相 互関係のもとに進行する.この人間側の条件と動的な相互関係について,柴山  [1]は,人間同士に対する嗜好を魅力度として数値化し,人間の前後と いう概念を導入したモデルをグラフィカルに表現した.

そこで,本研究は,人間側の条件を考慮した移動アルゴリズムを提案し, さらに,人間側の条件を様々な条件に設定し,人間がどのような行動をとるか をグラフィカルなシミュレーションにより考察し ていく.このシミュレーションは,コンピュータグラフィックスによるアニメー ション作成で,アニメータが逐次,集団行動する人間の動きを描くことなく, その描画を自動作成するためにも有用となる技術である.

具体的には複数人の集団2つが交わるような条件で,2つの集団 の中の個々の人間がどのような回避行動をとるかを,様々な変数や行動パター ンを用いてシミュレーションを行い,評価する. システムは拡張性を高くする事とWEB上でのインタラクティブが可能であること や マルチエージェントシステムへの応用を考え てオブジェクト指向言語である JAVAを用いて設計する.また,出力の結果はシ ミュレーションの結果を理解することを容易にするため,WEB上に2次元グラフィッ クスで表示する.



Hiroyuki Furukawa
2000-04-08