複雑系科学専攻
ノーベル賞物理学者のゲルマンによれば、複雑系科学とは、「多数の構成物が同時に相互作用することから生じる 『自己組織化』の予測、つまりシステムの構成物が相互作用する無数の可能な状態を計算すること」である。 これにしたがえば、複雑系科学では、物質から生命、社会全体まで、強く相互作用し合う部分を多く有するものすべてを研究対象にするということになる。
『自己組織化』とは、読んで字の如く、自分で構造や形状を作り上げてしまうことで、それには秩序がある。雪の『結晶』が身の回りで分かりやすい例である。もともとは大気中の水分子が、気温などの条件によって結合し、規則性を持った美しい形になる。これは誰かが手を加えたわけでもなく、自然に起こる秩序である。
このような物質、生命、社会などの現象を複雑系として捉えるため,それらが情報を処理する能力を持つ多数の要素のネットワークとして構成された、分散型情報システムの振る舞いによるものだと考える。 このような系に共通することは、構成要素の相互作用によって、構成要素からは予期できないような秩序構造や機能を動的、自律的に生み出すことにある。 その秩序や機能の自己組織化過程を情報処理過程とみなせば、複雑系に対する普遍的な視点を得ることができることになる。
当専攻はこのような視点に立ち、既存の学問分野の壁に捕われず、我々の周りに満ちあふれているともいえる複雑系現象の研究に取り組み、昔遍的な情報処理原理の解明を目指している。 例えば、人工生命、生体高分子の進化シミュレーション、非平衡非線形現象における秩序パターンとカオス、量子素子、生態系の多様性の起源、柔軟な知能システムなどの具体例を通して、自己組織化による情報処理過程に関する研究を行っている。 また、複雑系を解析するための革新的な計算手法を開発も行い、計算機の中の仮想世界におけるモデル系を「つくることによって理解する」構成論的方法の発展も視野にいれている。 このようなアプローチによって、自然及び人工の複雑系に内在する情報の構造、ダイナミクスを解明する。そのことによって、複雑系の自己組織化原理を明らかにし、情報科学の新しい概念と法則を発見するとともに、新しい情報技術を開発していくことを目的としている。
複雑系科学専攻行事予定のウェブページ:
http://www.cs.is.nagoya-u.ac.jp/event.html
本専攻では,専攻内で行われている様々な研究を理解するため,複雑系科学セミナーを定期的に開催している。近々,今年度第1回の複雑系科学セミナーが予定にあがっている。専攻外からの参加も大歓迎です。