社会システム情報学専攻
私たちの周りには目に見えないさまざまな情報が行き交っています。 「情報化社会」とか「情報社会」という特別な単語を用いなくとも、 情報は日常的にシステムとして構成され、稼働しています。 このような現実の中で忘れてはならない重要な視点は、 社会にとって有益な情報通信技術(ICT: Information Communication Technology)でなければならないということです。 私たちの専攻では、種々の専門的な立場を出発点としながらも、広い視野へと進み出て、 ICTと社会とのよい関係をどのように築いていくのかを探求しています。 その意味で、情報科学研究科という文理融合的な研究科における先鋒として位置づけられることができるでしょう。
本専攻での研究のベースとなる現状認識は、<インフラとしての知・情報>というものです。 インフラという言葉のこれまでの理解は主としてハード的な領域に関わるものだったのに対して、 システムというものをハード一辺倒に考えないところに、視野を広げるための脱却点があります。 いわば、<「もの」から「こと」へ>向かうところにこそ、 21世紀の知識基盤社会への対応の可能性を見ているのです。
こうして、本専攻の研究が目指すところと姿勢は次のようなものになります。
- 組織・社会・世界のインフラとして知識・情報を理論的に把握し、その実際的活用をはかること。
- 情報通信技術(ICT:Information Communication Technology)と社会との望ましい関係の構築
- 情報アーキテクト[建築家・設計者・製作者・創始者・発案者]という姿勢。
こうしたことを具体化するにあたっての専攻内の雰囲気は大変自由で、 先生方はそれぞれのご専門の立場を持ちつつ、他分野の先生との連携に挑戦しながら、 本専攻の大きな目標に向かって教育研究を進めています。 講座としては「知識社会システム論講座」、「電子社会設計論講座」、「情報創造論講座」、「情報社会基盤環境論講座」が開設されています。 それらの中では、社会における人間活動の協調をネットワーク上で支援する研究、 健全な社会を構築するための重要要素であるコミュニケーションに関する研究から、 ICTを活用した行政サービス及び地域コミュニティのあり方、情報デザイン、哲学的見地からの情報学の構築、 科学技術と社会の相互作用、社会に適合した情報基盤設計、などといった研究を展開しています。
このように私たちの専攻には、 自身の専門分野を持ちつつも既存の分野にとらわれない学問領域のパイオニア精神の旺盛な教授陣が揃っています。 私たちのこのスピリットに共感する学生も全国から集まっています。 2005年度には専攻内の他のゼミで研究発表と質疑応答を行う専攻内インターンシップを実施しました。 日頃当然と考えていた研究の視座に全く新しい視点を見出したり、 分野の異なる聴衆に対して如何にして自身の研究の社会的有益性、独自性を伝えられるのか、を考えるよい機会になったと思います。 緻密な調査に基づき将来の社会を見据えたロードマップを描いた上で、 独自性のある発想力と実行力を兼ね備えた人材を育成していきたいと考えています。