2013年08月12日平山 高嗣助教(社会システム情報学専攻)
組織的な若手研究者等海外派遣プログラム

 2012年10月6日から2013年1月13日までブリティッシュコロンビア大学(UBC)@カナダバンクーバーに滞在し、研究活動を行いました。UBCは、学部生4万人、大学院生1万人が学ぶカナダ西部最大の大学です。私の滞在を受け入れていただいたSidney Fels教授は、優秀な研究者が数多く集まるMedia and Graphics Interdisciplinary Center(MAGIC)のディレクタを務め、ヒューマンコンピュータインタラクションに関わる研究を音声処理、画像認識、CG、インタフェース、アートなど分野横断的に行い、SIGCHIやACM Multimediaといったトップカンファレンスで数々の成果を発表するなど、世界的に活躍されています。

 3ヶ月という短い派遣期間に何を行うか?ネットワークインフラが発達した現在において、どこにいてもできることではなく、その場にある環境でなければできないようなことは何か?それは私にとっては、ヒューマンコンピュータインタラクションを行う被験者実験であり、開発したシステムに対して様々な分野、文化圏の方々から意見を得ることと考えました。

 私の名古屋大学での研究活動拠点である間瀬研究室では、一つの対象、事象を多数のカメラで同期撮影した多視点映像を、インタラクティブに視聴するためのインタフェースPeg Scope Viewer(PSV)を開発しています。私はPSV視聴を支援するためのインタラクションをデザインしていて、UBCではユーザの注視行動を分析しました。そのために、生理学分野の研究室から高精度な視線運動計測システムを借用して被験者実験の準備を行い、実験倫理に関するチュートリアルを丸2日間かけて受講し、10ページに及ぶ申請書を書いて倫理審査を受けました。このプロセスに想定以上の時間がかかり、クリスマス休暇を間に挟んでしまい、帰国の1週間前に審査を通過できました。それから怒濤の実験でした。満足できる数の実験を行うことができませんでしたが、狙いに沿った分析結果が得られ、国際会議での発表を準備しています。

 UBCでは短期間で多くのことを学びました。滞在していた研究室のメンバは研究室をホームポジションとせず、どこででも研究していました。週に1、 2度はミーティングのために集まりますが、Fels教授やポスドクは出張が多く、ほとんどが遠隔ビデオチャットでの参加でした。顔を合わせた時は皆、とことん議論していましたが、もう居場所が「どこ」ということは重要ではないのかもしれないと感じました。私も午前中は研究室で実験の準備に集中し、昼間はキャンパス内に多数あるカフェやパブリックスペースで日本からのメール対応を行い、夜は間瀬研究室のミーティングに遠隔で参加していました。日本とバンクーバーとの時差関係は、バンクーバーに居る日本人にとって非常に良いように思いました。このような生活をしていると、対面コミュニケーションの機会を失いがちですが、宿舎のSt. John’s Collegeには100名以上の学生が暮らしていて、朝食と夕食時に多くの方とコミュニケーションを行う機会が持てました。それぞれの個性もそうですが、経歴が多彩です。ストイックさ、勉学、知識への探究心の深さ、そして他人に対する関心の高さに刺激を受けました。UBCの基本理念は「Tuum est(It is yours. It is up to you)」。広大なキャンパスの至る所に掲示されている「a place of mind」。人々にその心が表れているようでした。

 とても充実した濃密で貴重な時間を過ごせました。この機会を与えていただいた先生方、そしてFels教授、滞在先研究室のメンバ、全ての実験協力者に感謝し、この経験を今後の研究・教育に生かして行きたいと思います。


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