2017年02月24日社会システム情報学専攻 情報創造論講座
戸田山・久木田研究室(戸田山和久教授、久木田水生准教授)
共同での活動
当研究室の戸田山と久木田は哲学系の研究者であり、その立場から科学哲学、倫理学、科学技術社会論などの研究を行っている。哲学系研究者は単独で研究を進めることが多いが、当研究室では戸田山と久木田による共同研究や、他の研究者と共同して行う研究や活動を盛んに行っている。
(1) 技術倫理の研究
技術者の倫理教育や技術関係の不祥事の防止といった課題について技術者と協同で研究を行っている。この分野で戸田山と久木田の二人が参加した書籍に直江清隆,盛永審一郎編『理系のための科学技術者倫理』(丸善出版,2015年)がある。
(2) 科学技術と社会をめぐる研究
科学技術と社会は相互に影響を与え合って発展している。そのような相互作用のダイナミズムを理解し、現在そして将来の科学技術と社会の在り方について考えることが本研究室で共有されている大きな研究テーマの一つである。この分野で戸田山と久木田の二人が参加した書籍に伊勢田哲治、戸田山和久、村上祐子、調麻佐志編『科学技術をよく考える:クリティカルシンキング練習帳』(名古屋大学出版会、2013年)がある。特に近年は人工知能やロボットがますます人間に迫り、ある部分では人間を超える能力を身に着けるようになっている状況において、どのような社会・制度・人間観・倫理を構築するべきかという問題について共同で研究している。
(3) 自然主義哲学の研究
哲学における「自然主義」とは、簡単に言えば「超自然的なもの、神秘的なものに訴えず、できるだけ物理学や生物学などの自然科学に即して哲学を行おう」という態度である。戸田山は徹底した自然主義の立場から「情報」、「意味」、「自由意志」、「責任」などの概念を捉えなおす試みを推進している。その成果の一つとして2014年に戸田山和久『哲学入門』(名古屋大学出版会)を上梓した。2016年から、道徳性に関する近年の科学的研究を踏まえ、道徳性はどこまで科学によって明らかにできるかを研究するプロジェクト、「Morality mod Science」を共同で推進している。
(http://www.is.nagoya-u.ac.jp/dep-ss/phil/kukita/morality-mod-science.html)
(4) 情報と意味の哲学
言語や記号が意味を持ち、情報を伝達するというのはどのようなことなのか、そしてそれはいかなる仕組みによるのかといった問題について自然主義的哲学、言語哲学、論理学など、様々な角度から研究を行っている。
(5) Nagoya Journal of Philosophy
当研究室が中心となって、哲学の学術専門誌、Nagoya Journal of Philosophyを毎年一回発行している。哲学系の論文の発表媒体は必ずしも多いとはいえないため、特に大学院生にとって貴重な研究発表の場となっている。応用倫理学などの特集を組むこともある。
戸田山教授の研究
上記の他、戸田山教授は、数・情報・心理的状態などの抽象的対象を物理主義的な世界観とどのように整合させるかという存在論的問題や、知識を自然現象としてとらえる視点から従来の認識論的問題設定を考え直す認識論の自然化を研究課題としている。
久木田准教授の研究
上記の他、久木田准教授は語用論的な観点からの数学の研究、歴史的文献研究を支援するためのソフトウェアSmart-GSの開発と活用を行っている。
大学院生の研究
現在当研究室に所属する大学院生の研究領域は、哲学的論理学、数学の哲学、心の哲学、美学、クリティカル・シンキング、リスクの哲学、社会科学の哲学、経済学の哲学、情報倫理、企業倫理学、功利主義など多岐にわたっている。論理学の哲学、数学の哲学、科学哲学、科学技術の哲学を専門とする教員が二人いるという点では当研究室は全国でも珍しく、また、応用倫理学の中でも情報倫理や技術者倫理を専門的に研究することのできる大学院が全国的に非常に少ないという事情もあり、当研究室では科学哲学や応用倫理学を研究したいという大学院生にとって研究しやすい環境を整えることを心がけている。
研究室ウェブサイト:http://www.info.human.nagoya-u.ac.jp/lab/phil/