2007年12月27日社会システム情報学専攻・情報社会基盤環境論講座
(協力講座:情報連携基盤センター・情報基盤システムデザイン研究部門)
間瀬研究室(間瀬健二教授、梶田将司准教授)
当研究室は、コミュニケーション支援研究室(Computer Mediated Communication Lab.)と自称して、人間同士や人間対モノのコミュニケーションをコンピュータを使って支援する技術を研究しています。
コミュニケーション支援とは
共同でモノを創造したり生産する際に、我々はコミュニケーションを必要とします。社会活動においても、コミュニケーションは欠くことができません。しかし、コミュニケーションにおいて自分の意図を的確に伝えたり、相手を十分に理解することは容易ではありません。
何が問題なのでしょうか?それは、双方の考え方や言葉の基盤がそろっていないので、お互いに、相手が表現したメッセージを正しく理解することが困難となるからです。また、自分の考えや感情を正しく表現できないことや、聞いたことを整理したり覚えておくことが困難だという問題もあります。
そこで、コンピュータの計算メディア(computational media)の特性である、記録性、再現性、検索性、分析性などを利用して、人間のコミュニケーション能力を補助、強化することが考えられます。
このようなコミュニケーション支援技術は人間同士だけでなく、モノを使うときにも、モノと人とのインタフェースとして必要になります。例えば、知能ロボットとのコミュニケーションについても考える必要があります。
間瀬研究室では
当研究室では、コミュニケーションを支援するための諸技術について、画像処理やマルチモーダルインタフェースなどの要素技術から、ロボット、ユビキタス・システム化技術まで、広く研究しています。さらに、人間をシステムの一部としたインタラクションのモデル化とその評価手法を研究しています。また、情報連携基盤センターという実サービスをキャンパスに提供している研究部門として、情報ポータルや教育学習環境システムの研究開発も行っています。
とくに、コミュニケーションの内容や場である、体験や行動の計算メディアによる表現法に興味があります。例えば、自分の体験や行動を「記録・記憶」し、「要約」して、相手に「表現」して伝え、相互に「理解」するというインタラクションの過程を分析して、それぞれのステップで計算メディアによる支援を検討します。これらのステップにコンピュータを介在させて、コミュニケーションをより効率的に、またより効果的なものへと向上させることをねらっています。
具体的には、次の3つのアプローチから様々なテーマの研究をすすめています。
ユビキタスシステム技術の研究
ユーザの文脈状況やインタラクションを分析・理解することによって、様々なサービスをいつでもどこでも、便利で手軽に提供するユビキタスシステムやウエアラブルコンピュータを実現できるようになります。音声研究分野において重宝されたコーパスの考え方を援用し、インタラクションについて蓄積・分析・利用する、インタラクション・コーパスを提案しています。
- ユビキタス教育学習環境(u-Classroom)
- ユビキタス体験メディア
コミュニケーション支援技術の研究
会議録やスポーツ・旅行、日常生活を多様なセンサシステムで記録し、要点をまとめ記憶・回想を補助したり、対話を可視化して共同作業を支援します。記録の際に、様々な粒度でイベントをセグメント化し、あとの引用を便利にする的確な注釈をつける技術をメディア処理やインタフェースデザインの観点から追求しています。会議の映像記録、ロボット会議システムや体験記録ウェアラブルシステムの研究をしています。
- ロボットコミュニケーション:記録、プレゼン支援
- ロボット遠隔会議:ロボットを介して遠隔会議に参加する際に、どのモダリティが会議参加の臨場感を高めるのかを調べています。(写真1)
- 医師患者対話支援: 医師患者間の医療面接を分析し、面接の質を向上させるための支援技術を研究しています。現在は、医学生の面接スキルの向上に役立てる可視化技術を研究しています。(図1)
- 体験物語、共有: story-tellingを使った外国人向け漢字学習支援技術の研究をしています。
● 状況処理技術
体験の記録には、体験した事実が「いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように」といった、どのような状況で起きたのかという文脈(コンテキスト)が、記憶と回想の場面で重要な役割を果たします。文脈や状況の認識・理解はパターン認識の新しい分野として注目されています。インタラクションパターンの分析などの研究をしています。
- 「誰が、何を」音声・映像メディア処理:人物、行動抽出、理解:車載カメラからの任意姿勢歩行者の検出技術を研究しています。
- 「どこで」状況検出技術:無線LAN基地局からの電波情報を使った、自位置推定技術を開発しています。
- 「どのように」インタラクションパターンモデリングの研究:インタラクションから重要なパターンをマイニングする手法を研究しています。
- 「なぜ」興味・嗜好抽出処理:自分の嗜好にあった料理レシピの推薦に使える食材の重要度尺度である、foodstuff frequency, inverted recipe frequency(FF-iRF)を提案しています。
- 「なにを」記憶支援・強化手法:衣服コーディネーションにおける持ち物回想支援による協調作業支援の研究をしています。(写真2)
- 「なぜ、どのように」状況モデリング、状況推論