2012年10月4日平山高嗣 助教(社会システム情報学専攻)2012/7/1着任
大阪大学で学位を取得。京都大学、名古屋大学で特任助教を経験し、7月から社会システム情報学専攻の助教として着任いたしました。学生時代を含めた研究活動の最初の10年は認知科学、人工知能、画像認識分野それぞれで顔に魅了され、顔にこだわった研究を行いました。研究者を志した当初から辿り着きたかったヒューマンコンピュータインタラクション研究に足を踏み入れることができるようになって5年ほどになります。
機械が人の活動をサポートしたり、人と協調的に行動するためには、外から観測することができる振る舞いだけでなく、観測困難な心的状態を推定する必要があります。人は対話相手の心を読みたい時に、積極的に働きかけを行って、その反応を観察することを良く行います。例えば、顔向けを伴う働きかけに対する不同意の発話応答タイミングが同意の場合よりも遅くなり、それらのタイミングの差が顔向けを伴わない場合より大きくなることを明らかにしました。 このようなヒューマンコミュニケーションの分析研究を応用し、これまでに、情報システムが提示情報を切り替えることでユーザに働きかけを行い、それに対するユーザの視線反応のダイナミクスから興味を推定するMind Probingを設計してきました。
Mind Probingの一手法として現在研究を進展させているものが、対話相手の興味を探る行為としての共同注視を応用したGaze Mirroringです。共同注視は、他者の心を理解するプロセスの一つであり、他者と関心を共有する事物へ注意を向ける行動です。これに基づき、ユーザの注視行動を擬人化エージェントが同調的に模倣することで、ユーザの振る舞いに興味を顕在化させるというインタラクションモデルを設計しています。 擬人化エージェントはユーザのアバタとして働くため、共同注視を通じた他者理解は自己理解に置き換わり、ユーザは自己の興味への気づきを促進する可能性があります。
対話状況以外の日常活動シーンにおいては動的な視覚刺激が溢れているため、人は外環境からMind Probingされているようなものです。人の心的状態を振る舞いに引き出すことができている刺激がどういったものであるか特定できれば、人のユニバーサルサポートを進化させることができます。そこで、映像視聴時や自動車運転時の集中/非集中状態を対象にし、環境ダイナミクスと人の視線運動との時間的関係を分析し、それらの状態を識別する計算モデルを提案しています。 Mind Probingに関する研究は人の個性をいかに考慮するかが今後の課題です。個性は、顔に魅了されたきっかけです。心的状態の個性とはそもそも何か?これから10年の探究となりそうです。