2015年02月13日榎掘 優 助教(社会システム情報学専攻)2015/1/1着任
2015年1月に着任しました榎堀優です。2010年に立命館大学大学院理工学研究科にて博士(工学)を取得後、同大学助手を1年間務めました。2011年に名古屋大学の研究員として赴任して、愛知県「知の拠点」重点研究プロジェクトのプロジェクト3「超早期診断技術開発プロジェクト」にてウェアラブルコンピューティングによる早期診断の実現を研究しました。2013年から同大学特任助教となり、この度、同大学助教として着任した次第です。
私はコンピュータが日常に溶け込んで、密かに、しかし確実に人をサポートする世界という夢に見せられて研究者となりました。元来の意味でのユビキタスコンピューティングです。今だとインビジブルコンピューティングの方が、的確に意味が伝わるかもしれません。まだまだ理想へは遠いですが、日常に溶け込める布センサを使った2つの取り組みをご紹介します。
布センサは柔らかく、人体に近い場所でのセンシングに適しています。例えば、衣類としたり、ベッドシーツにしたりできます。また、我々の布センサは織り構造によってセンサ機能を構築しているため、織るだけセンサが構築され、通常の布と同じ方法で大規模化・量産が可能です。そのため、医療や看護など、衛生面から使い捨てが推奨される分野へも向いています。
以下の図は、左は肺の動作を継続的に計測するSprioVestです。伸縮を検知できる布センサを利用しています。本研究は名古屋大学医学部の川部教授らのご協力の下で進めている取り組みで、日常的な肺動作の計測から、各種の肺疾患の初期症状や兆候の検知を目指しています。例えば日常の歩行中に肺がどんどん膨らんでいけば、COPDなどの閉塞性疾患の兆候が発見でき、早期治療に繋がるかもしれません。現在はVestですが、将来的には下着などの形状として、日常的・自動的・継続的に肺動作を計測できるようにしたいと考えています。
次の図は、就寝時の体圧を計測するベッドシーツです。本研究は愛知県立大学看護学部の柳澤教授らのご協力の下で進めている取り組みで、継続的な体圧計測から褥瘡を予防したり病理を解明したりする研究です。褥瘡とは、人体の一部に高圧が継続的に掛かることで発生する症状です。初期は健康な皮膚に見えるのに時間が経つと穴が空いたりと発見しづらく、また、一度発生すると治りづらいと言われています。そのため、発生させないことに重点が置かれ、寝たきりのご高齢者などの看護では、2時間に1回という頻回の体位変換などが実施されています。しかし、実際には高圧部位が発生していなかったり、発生していても許容限界が個々人で違っていたりと、必ずしも2時間に1回という負荷の高いケアを介護者(特に老々介護者)にご負担いただく必要は無いかもしれません。しかし、今までは我々のような大規模かつ安価な布センサが無かったために、基礎データも集まっていない状況です。そこで、現在は特別養護老人ホームなどと連携して、ご高齢者の継続的な就寝時体圧データなどを収集しています。