next up previous
Next: Bibliography

by 58 [
回転二重円筒管に生ずる非線形発達過程に関する数値計算

Numerical Study on Non-Linear Developing Processes in Two Concentric Rotating Cylinders

◯正 古川 裕之 (名大院)   正 渡辺 崇 (名大)
 正 中村 育雄 (名城大)    


$\textstyle \parbox{120mm}{
Hiroyuki FURUKAWA, Nagoya University, Furo-cho, Chik...
...iversity\\
Ikuo NAKAMURA, Meijo University, Shiogamaguchi, Tenpaku-ku, Nagoya}$

$\textstyle \parbox{130mm}{
\vspace{3mm}
\begin{center}
\par {\it Key Words} : ...
... Fluid Dynamics,
Finite Difference Method,
Axisymmetric Flow}
\end{center} }$


]


  
Figure: Development of flow field to normal six-cell mode ( ${\it\Gamma }$=6.0,  Re=200,  T=0)
\begin{figure}
\epsfile{file=material/transition/high-01.eps,scale=0.47}
\end{figure}


  
Figure: Development of flow field to normal six-cell mode ( ${\it\Gamma }$=5.8,  Re=200,  T=7.2)
\begin{figure}
\epsfile{file=material/transition/high-02.eps,scale=0.5}
\end{figure}


  
Figure: Development of flow field to anomalous seven-cell mode ( ${\it\Gamma }$=6.6,  Re=400,  T=0)
\begin{figure}
\epsfile{file=material/transition/high-03.eps,scale=0.5}
\end{figure}


 
Table 1: Mode formation processes of the normal sic-cell mode. ● : disappearing cell. Nn : Normal n-cell mode.
An : Anomalous n-cell mode.
  Mode 1 Disappearing cells 1 Mode 2 Disappearing cells 2 Final mode
(1)     N8 ◯◯◯◯◯●●◯ N6
(2)     N8 ◯◯◯●●◯◯◯ N6
(3)     N10 ◯●●◯◯◯◯●●◯ N6
(4)     N10 ◯◯◯●●●●◯◯◯ N6
(5)     N10 ◯◯◯●●◯◯●●◯ N6
(6)     N14 ◯●●◯◯●●●●◯◯●●◯ N6
(7)     N14 ◯●●●●◯◯◯◯●●●●◯ N6
(8) N14 ◯◯◯●●◯◯◯◯●●◯◯◯ N10 ◯●●◯◯◯◯●●◯ N6
(9) N14 ◯●●◯◯◯◯◯◯◯◯●●◯ N10 ◯●●◯◯◯◯●●◯ N6
(10) N10 ●◯◯◯◯◯◯◯◯● A8 ●◯◯◯◯◯◯● N6
 

1.  ま え が き
 非線形力学において,最終的に安定したパターンが何故保持されるのかと いう漸近挙動については数多くの研究がなされている[1]. その一方で,漸近状態に近づくまでの複雑なパターン遷移挙動が近年注目を集め ている[2]. たとえ最終状態は同じ形であっ ても,そこに至る過程は全く異なる場合がしばしばある. 本研究で取り挙げる,内円筒が回転し,外円筒が静止している同軸の二重円筒間 に生ずるテイラー渦流れにも類似の非線形的挙動が見られる ことが可視化実験で観察されている[3]. 本研究では,アスペクト比 ,レイノルズ数,内円筒増速時間を様々に変化させた 場合に現れるテイラー渦流れの多様なパターン遷移現象を数値的に 解析し,モードの発達過程を整理して統一的に理解することを目的とする.

1.   計 算 条 件
 支配基礎方程式は,円筒座標系 $(r,\theta,z )$表示の軸対称非 定常非圧縮のNavier-Stokes方程式,および連続の式である. アスペクト比 ${\sl\Gamma}$は円筒高さの内外円筒すきまに対する比であり, レイノルズ数 Re は内円筒周速度と内外円筒間のすきま距離より見積もる. 内外円筒すきま距離を代表長 さ,内円筒周速度を代表速度,代表長さの代表速度に対する比を代表時間として 物理量を無次元化する. 支配方程式の離散化はMAC法に基づく. 壁面の境界条件として,速度にはすべりなし条件を,圧力には 運動方程式に基づくノイマン形条件を与える. 初期条件として,全ての領域で速度ゼロを与える. 内円筒の増速時間の違いによるモード発達過程を調べる 場合は,それぞれの増速時間Tの間にレイノルズ数を0からその条件の値まで線形 に増加させ,その後一定とする.

流れを可視化するために,以下の式で規定される流れ関数の値を用いる.

\begin{displaymath}u = - \frac{1}{r}\frac{\partial {\it\psi}}{\partial z}, \ \ \ \ \
w = \frac{1}{r}\frac{\partial {\it\psi}}{\partial r}.
\end{displaymath} (1)


3.  解析結果および考察

3$\cdot$1  パターンの遷移     テイラー渦のモード発達過程を調べるため, アスペクト比を 2.6 から 7.0 まで 0.2 刻みで 23通り,レイノルズ数を100 か ら 1000 まで 100 刻みで 10 通り,内円筒増速時間が 11 通りの合計 2530 通り に変化させ,現れる流れの様子を観察した. その結果,流れが十分発達した場合に現れる最終モードとして, 2, 4, 6, 8, 10セルを持つ正規モード,2, 3, 4, 5, 6, 7, 8セルを持つ 変異モードの合計 12 モードを確認した. ここで,正規モードとは両方の円筒端面近傍において,外円筒側から内 円筒側への流れを持つ正規セルを伴うモードのことである. それに対して変異モードとは,片方,もしくは両方の円筒端面近傍にお いて正規セルとは逆の流れである内側から外側への流れを持つ変異セルを 伴うモードのことである.

図 1, 2 に最終モードが正規 6 セルモードの場合における二つ の異なる発達過程の様子を示す. 半径方向中央断面の位置における流れ関数値の絶対値をとり, その軸方向分布の時間変化を示したものであり,右端,左端が円筒端面を表す. tは無次元時間を示し,時間の正の向きは図の下側から上側を向いている. 一つの山が一つの渦を表し,谷は渦の境界を示しており, 山の数が流れの持つ渦の数に相当する. 図 1 は内円筒を瞬間的にスタートしてレイノルズ数を 200 まで増大させてお り, 図 2 では,無次元時間 7.2 の間にレイノルズ数を 200 まで増加させている. 図 1 において,t1の時点で流れは 10 個の渦を持つ. そして,それぞれの端面から 2,3 番目の渦が弱まり,最終的に消滅することに より,t2の時点で流れは 6 つの渦を持つようになる. 一方,図 2 では,t3 において流れが 10 個の渦を持つことは 図 1 における時点 t1 と同様である. しかし,図 2 では,それぞれの端面から 4 番目の渦が消滅し,その消滅する渦に隣接する渦が融合することにより 6 つの渦を持つ流れへと遷移している. 上記二つの例では,流れが正規 10 セルモードを経て,最終モードである正規 6 セルモードへと遷移する点では同様だが,渦の消滅の仕方が異る.

最終モードが変異 7 セルモードの例を図 3 に示す.t5の時点で流れは 14 個の渦を持つ.そして,それぞれの円筒端面から 4, 5 番目の渦が消滅すること により, t6の時点では中間段階として 10 個の渦を持つ流れが形成される.やがて, 図の左端で示した円筒端面に接している渦が消滅し,さらに右端で示した端面か ら 2, 3 番目の渦が消滅することにより,流れは最終モードである変異 7 セル モードへと遷移する.

3$\cdot$2  発達過程の分類     最終モードが正規 6 セルモードである場合の発達過程を表 1 にまとめる. 流れは Mode 1, Mode 2 を経て最終モードである 正規 6 セルモードへと至る. 丸が一つの渦を表し,モードが遷移する時には, ``Disappearing cells'' の欄に黒丸で示した渦が消滅する. 正規 6 セルモードの発達過程は,10 通りある. 図 1, 2 はそれぞれ表 1 における (3), (4) を 示したものである. (1), (2) は共に,正規 8 セルモードから正規 10 セルモードへの遷移であ るが,モードが遷移する際に(1)では,セルが端面付近で消滅するのに対し, (2)では軸方向中央付近で消滅する. 同様に,(3)〜(5), (6)〜(7) では,それぞれ正規 10 セルモード, 正規 14 セルモードから正規 6 セルモードへと 流れが遷移するが,消滅するセルの位置が異なる. (8)〜(10) の例では,一旦 Mode 1 が形成された後, 中間段階である Mode 2 を経て最終モードへ至る という二段階の遷移をする.

(10)で,中間段階として変異 8 セルモードが現れる. はじめ正規 10 セルモードが現れ,二つの円筒端面に接している 渦が消滅することにより両円筒端面に変異セルを伴うモードが 形成される. そして円筒端面に接している変異セルが消滅し,流れは 最終モードである正規 6 セルモードへと移行する.

以上のように,流れが十分発達したときに現れる最終モードが同じであっても, その形成される過程は多様で,かつ段階的である. 表 1 に示した最終モードが正規 6 セルモードである場合のモード発達過程の他に, 最終モードが正規 2, 8, 10 セルモード,変異 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8 セルモー ドについてもそれぞれの発達過程に各種の様式が見られた.

4. ま と め

 両端に固定端面を持ち,内円筒が回転する有限長さ の同心二重円筒内に発達するテイラー渦流れをにおける モードの発達過程を数値的に解析し,以下の結論を得た.

1.
流れが十分発達した時あらわれる最終モードが同じであっても, 発達過程が異なる場合がある.

2.
最終モードが正規 6 セルモードとなる流れには,少なくとも 10 種類の発 達過程が存在する.

文    献


 
next up previous
Next: Bibliography
Hiroyuki Furukawa
2001-10-09